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平成22年10月23日 生物資源研究所所長 根路銘 国昭氏

平成22年10月23日放送
「科学者として世界とどう渡り合うか」

生物資源研究所所長 根路銘 国昭氏

根路銘 国昭(ねろめ くにあき) - Wikipedia



 元国立予防衛生研究所ウイルス研究室長で、現在、生物資源利用研究所所長を務めておられる根路銘 国昭氏のインタビューを聴きました。


 アメリカ民政府の統治下にある沖縄で中学・高校生時代を過ごしたことにより、アメリカに強い劣等感をもった根路銘氏は、それゆえに学者となりアメリカと対等な立場でケンカをするということに強いこだわりを持つようになります。

 日本人研究者の多くが神社に参拝するようにアメリカに留学し、論文を書く事でハクをつけて帰ってくる一方で、根路銘氏はひたすら国内での研究に打ち込み、大阪府立大からの教授就任要請などにも目もくれず、その成果を深めていくことにのみ専心し「私は純粋の国産の研究者です」と言い放つ姿勢もこの対抗心がその根幹にあったようです。

 そして、その研究成果は根路銘氏の宿願とも言えるアメリカとのケンカで大いに威力を発揮することになります。

 今回の放送で語られたアメリカやWHOとのケンカの逸話は以前からネット上でも話題になっていたようで、いくつかのサイトで同内容の記事が書かれていました。

WHO多国籍製薬会社を向こうに、ワクチン問題で大立ち回り。孤軍奮闘、日本人を守った沖縄人ウイルス学の権威・根路銘邦昭 《阿修羅》
医学ちょっといい話12「根路銘国昭氏の話」 《医学処 医学の総合案内所》



 今回のインタビューは、対談形式ではなく講演会の収録という形で行われ、根路銘氏の発言にたびたび会場から笑いや拍手が起こっていましたが、中でも特に拍手をおくりたいと思ったのはHAワクチンの認可をめぐるケンカの話です。

 1972年、HAワクチンを開発した根路銘氏は、7つの製薬会社のうち3つの会社のワクチンが規定に違反するとしてその認可を拒みますが、莫大な損害を出すこととなる製薬会社は厚生省や所長に働きかけ、所長からは「政治命令だ」と判を押すことを強要されながらも、「私は学者ですから政治的な判断はしません。もし、学者が国民に背を向けたら誰が国民を守るんですか」と反論して頑として首を立てに振らなかったそうです。

 最近のマスコミに登場する人物の中には、学者としての職責を蔑ろにし安易に企業やマスコミに迎合する発言をして恥とも思わない者も少なくない中、このぶれない学者魂のあり方には大変な頼もしさを覚えました。

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