平成24年4月20日 NPO法人日本チョウ類保全協会理事 松村行栄氏
「ヒメギフチョウの舞う頃」
作家 NPO法人日本チョウ類保全協会理事 松村行栄氏
日本チョウ類保全協会
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幼少時から父親と小学校の先生の影響でチョウに親しんでいた松村氏は、日本に約240種類いるチョウのうち1/4が絶滅に向かっているという現状に危機感を抱き、57歳で製薬会社研究員の職を辞してチョウの環境保全活動に専念する道を選びました。
「チョウは自分にとって一番の親友」と言ってはばからない松村氏は、チョウを愛でて楽しむという文化を一般に広めていくことの重要性のひとつとして、チョウを守ることは日本の文化を守ることだと言います。
「人間の生活様式が変わってくると自然との関わりが変わってくるわけですね」
かつての里山では、薪を作ったり落ち葉かきをする事によって常に手を加える事で自然を作っていましたが、やがて炭がガスになり、雑記林が不要なものとして放置されるようになると、自然環境も荒れ果て生物にとっても住みづらい環境になってしまいました。
こうした現状に対し、松村氏は山との関わりを新しく作っていくことを訴えかけ、そのモデルケースとしてイギリスの例をあげています。
また、チョウの種類ごとにどんな生活をしているのかという研究が進んでおり、チョウを見ることでそこがどんな環境かを把握できるため、チョウの分布を数十年間に渡りモニタリングし記録に残すことで、自然環境の指標として活用しているといいます。
日本チョウ類保全協会では、日本でもこうしたモニタリング活動を根付かせるために、野外のチョウを被写体としてオス・メスの裏表をすべて写真で掲載し、似た種類のチョウはその違いについて説明を加えるという特徴を持った図鑑を作製しており、松村氏も「一般の方でも日本の全てのチョウの名前がわかる初めての図鑑」と豪語されています。
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私も子供の頃にアゲハの幼虫を育ててその成長の過程を観察したことがありますが、最初にサンショウの枝にしがみついている幼虫を見つけたときは、黒く短い毛糸のような地味な外見で、一見しただけではその存在にも気づかないくらいでした。
この毛糸が、からだよりも大きな葉っぱを毎日食べ続けていると、やがて原色の鮮やかな緑色の巨体になり、サナギになるとまた一転して枯葉のように茶色くしなびてしまいます。
そして、それまでの大食が嘘のように身じろぎもしない日が続き、その物体が生き物であることさえ疑わしく思えてきたある日の朝、虫かごの中には目を見張るようなキレイな羽をひろげたアゲハがいました。
その変貌の過程は、そのたびに手品でも見ているような驚きに満ちていたことを思い出します。
平成23年5月24日放送分の南孝彦氏のインタビューでは、チョウのこうした変化は天敵の鳥やハチから身を隠すための擬態で、最初の毛糸は鳥のフン、原色の緑色は青葉、茶色いサナギは枯葉を模している、そしてそこまでしても、卵から成虫になれるのは全体の1%に過ぎないという話が出ています。
生き残るために全力で自分を変え続け、その努力の結実としてあの成虫の姿があると思うと、改めてその美しさに無償の賛辞を送りたくなります。
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松村氏は、日本に植物や鳥に比べてチョウを見て楽しもうという人が少ない理由として、学校教育での「採っちゃいけない・殺しちゃいけない」が行き過ぎていることがチョウ離れの原因となっているのではないかと推測しています。
昨年は、南雲小学校の生徒がロシアでヒメギフチョウの保全活動の紹介をしており、こうした活動は生徒にとって自信をつける事になり、将来にもつながるものがあると熱弁します。
自然との共生の難しさを考えさせられるとともに、その閉塞を打破するための一つの指針となりえるものを示してくれているインタビューでした。
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