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令和3年8月9日 NPO法人PCV共同創業者 メアリー・ポピオ氏

令和3年8月9日放送

「世界に届け 被爆者の声」

NPO法人PCV | Peace Culture Village
PCV Hiroshima (@npopcv) • Instagram


覚え書き

広島への移住

  • 5年前、被爆者との交流をきっかけに広島に移住し、世界へ向けて平和を訴えるNPO法人PCVの共同創業者となる。

NPO法人PCV | Peace Culture Village

  • オンラインなどを通じ英語で世界中の人々に被爆者の証言を伝える活動をしている。
  • コロナ禍の中、この半年で40ヶ国2500人にオンラインプログラムを提供した。

参加者の反応

  • ベイルートの爆発事故を経験した子どもたちは、爆発の恐怖を思い出して被爆者に共感していた。
  • シリアからの強制移住者は、トラウマで自分の話をしたくなかったが、被爆者の証言を聞いたことで、自分も証言をして貢献したいと被爆者の方に伝えていた。

被爆者の継承

  • 広島はどうやって被爆者を継承するかを真剣に考えている。
  • 2025年までに37%の被爆者団体は継続が困難になる。継承者がおらず、資金もない。
  • PCVは米国人、英国人、日本人のバイリンガルな若者のチーム。被爆者が亡くなった後の次世代の平和文化リーダーの育成に取り組んでいる。

活動のきっかけ

  • 米国の学校では、広島・長崎の原爆について何も学ばなかった。
  • 隠れキリシタンの歴史を学ぶため、奨学金で長崎に留学し、そこで原爆資料館へ訪れる。
  • 原爆によって自分と同じカトリック教徒が殺されたことに強い衝撃を受けた。その瞬間から原爆は、自分事(じぶんごと)になった。
  • 恥ずかしさ、罪悪感、自分の国の評判を守りたいなどの感情。初めて米国に批判の目を持ち原爆についてもっと学びたいという気持ちが湧いた。

堀江壮さんとの出会い

  • 次の夏、広島で被爆者の堀江壮(ほりえそう)さんに出会った。堀江さんは英語を話せるので直接話せた。
  • 堀江さんは5歳のときに被爆し、家族全員が放射線の影響に苦しみながら癌で亡くなった。
  • 自分の家族と重ね合わせて、もう一回「自分事」になった。
  • 証言後に質問すると、米国人への憎しみは残ってないと言われた。自分がそんなひどいことをされて許せるか、クリスチャンとして敵を愛しなさいと教えられ理解していたつもりでも、想像できなかった。
  • 原爆から生き残った人々は、許しと平和を選択し、未来の世代は2度と同じ経験をしないように純粋に平和のために頑張っている。この人達との出会いを本当に広げたいと思った。

NPO法人PCV立ち上げへ

  • 大学卒業後、2年間はハーバード大学で仕事をしながら日本でボランティア活動をしていたが、平和活動を仕事にしたいとの思いがあった。
  • スティーブン・リーパーさんにメールで相談すると、NPO法人の立ち上げに誘われる。
  • 平和活動は、やりたいこと、楽しいこと。人間にとって大事な問題を毎日毎日考える、世界中の人々と考える仕事は天職。広島でそれができるならと移住を決めた。

葛藤

  • 加害者の国から来た自分が広島で平和活動をすることに少し罪悪感があったが、核兵器の廃絶のためにみんなが協力しないと出来ないと同僚や被爆者のかたも応援してくれて違和感がなくなった。

外国人に被爆者の経験を伝える

  • 外国人は、第二次世界対戦について学ぶ時、被爆者のストーリーを学ばない。そのため核兵器の酷さがわかっていない。
  • ストーリーを伝える時、いつも被爆前の話をする。被爆前の再現画像を見せる。
  • 田中稔子(たなかとしこ)さんという被爆者のかたは幼稚園のクラスメートが全員亡くなっている。現在の平和公園から中継しながらクラスメートの写真や録画された証言などをオンラインで組み合わせてわかりやすく伝えることができる。
  • 外国人は、原爆によって何が失われたかを学ばない。このような資料を通して繋がれるなら広島と被爆者のストーリーは自分事になる可能性が高くなる。
  • 平和にとって一番大切なのは自分事。友達の経験のように、個人的なつながりができたらそれがターニングポイントになる。そのきっかけを作っている。
  • 被爆者の伊藤正雄(いとうとしお)さんに、レストハウスに貼り付ける平和のメッセージをお願いしたところ、「許し」だった。
  • 自分の心が平和でないと世界は平和にならない。本当は、「ちちをかえせ、ははをかえせ」という原爆詩集のことばを書きたかったが、そういう想いは置いておいて、未来に向けて行動したいと言っていた。
  • みんなこの話を聞くと感動する。被爆者が米国人を許しているってどういう意味、と私と同じように考える海外の方もなるほどねと思う。

核兵器禁止条約の発効

  • 被爆者や私を含め多くのひとに希望を与えた。
  • もうひとつ、心の平和を紹介することも必要。平和を思う心、感じる心、目指してる心。それが実現したら人間は「悟り」を達成できると思う。

この先の活動

  • 外国人と広島をつなぐ機会を増やしたい。同時に、私のような平和活動をしたい外国人を広島で増やしたい。その外国人のために仕事を作りたい。
  • 広島からこのエネルギーを発信できれば、未来のために大事な場所になる。広島が国際平和文化の街になればいいな、と思う。

感想

 ポピオ氏はボストン出身の29歳の米国人女性ですが、広島移住から5年にもかかわらず非常に流暢な日本語で、また暗くなりがちな平和問題について話している間も常に明るいトーンの声色で、本来的に人間が好きな方なのだということが伺われます。
 インタビューの中で繰り返し出てきた「自分事(じぶんごと)」という言葉は、ご自身の体験に裏打ちされた重みがあり、社会の出来事に対してどうせ他人事と無関心になりがちな私達日本人にとっても意識して心に刻んでおきたい言葉だと感じました。
 コロナ禍の中で無事にオリンピックも閉会しましたが、まだまだ先行きが不透明な情勢のなかで、世界がどこへ向かうのか自分たち一人ひとりの問題として取り組んでいきたい課題です。

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