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平成26年7月17日 日本鯨類研究所顧問・農学博士 大隅清治氏

平成26年7月17・18日放送

「クジラ牧場にかける夢」

大隅清治(おおすみ せいじ)- Wikipedia

覚え書き

調査捕鯨中止の判決

  • 今年3月の国際司法裁判所からの南極海での調査捕鯨中止の判決は、日本の主張も充分に通っており、調査自体を否定するものではない。
  • 現在も南極海での調査捕鯨を計画中。

鯨類研究所

  • 戦後、GHQが資源調査を条件として、食料不足を補うための捕鯨を許可した。
  • 国際捕鯨委員会の決めていた捕獲制限数は科学的な根拠がなく、クジラ資源が減っていったため、鯨類研究が必要となった。
  • 当時の鯨類研究所は、同年代の研究者が切磋琢磨していて、クジラのトキワ荘のようだった。
  • 捕鯨は、当初欧米のほうが盛んだったが、鯨油のみを目的としていたため頭数の減少にともない採算が合わなくなり、撤退していった。
  • ハクジラ類の歯の断面は木の年輪のようになっていて、マッコウクジラは1年に1層できることを世界に先駆けて発表した。
  • ヒゲクジラ類の耳垢にも年輪ができるが、1年に2層出来るという説は間違いで、1年に1層できるという事実を突き止めた。

国際捕鯨取締条約

  • 前文に、クジラ資源を保護しながらクジラ産業を継続的に進めていくという条約の趣旨が書かれている。
  • 条約加盟国で商業捕鯨をしているのはノルウェーとアイスランド。日本も商業捕鯨のための異議を申し立てていたがアメリカの圧力で撤回した。
  • 条約に加盟していないインドネシア・カナダも商業捕鯨をしている。
  • 条約の管理対象はクジラの73~78種いるうちの13種。イルカも対象外。
  • オーストラリア西海岸のザトウクジラは、数が増えすぎてエサが採れなくなり、餓死して海岸にうちあげられるものが増えている。
  • 捕鯨の対象となっていない淡水域のイルカや汽水域のクジラが、開発による環境の悪化で絶滅の危機にある。

シーシェパードの妨害

  • 欧州はクジラを食料としてこなかったため海の環境は手付かずにしておくべきという思想が強い。
  • 日本はクジラ資源の真相を正しく伝えられていない。
  • 日本に対する偏見もある。

クジラの畜産

  • 現在のクジラは太平洋での放牧のようなもので、技術の向上で陸での畜産も可能。
  • 太地町の湾内でイルカを飼っており、将来はミンククジラを飼育予定。
  • 飢餓にさらされている発展途上国にクジラ肉の缶詰を提供したい。60年代に太平洋諸島国に提供していたが、価格高騰で提供できなくなった。
  • 従来のホエールウォッチングでは、お年寄りや子供、体にハンディキャップのある人は楽しめない。

感想

 60年以上に渡り、日本の鯨類研究の中心的な存在として活躍されてきた大隅清治氏が、これまでの研究の成果と現在の日本の調査捕鯨の置かれた状況、そしてこれからのクジラ資源とのあるべき関係について2日間にわたってインタビューに応えられました。

 欧米ではクジラ資源に手を加えることに消極的で、自然のあるがままにするべきという考えが根強いことに対し、大隅氏は「クジラは非常に魅力的。だからこそ、いろいろな形で利用するべき。それこそが水産資源学である。」と断じられていました。

 バランスを取りながら、日本で継承されてきたクジラ食文化を世界に広めていきたいという言葉には、鯨類研究の現場に長年携わってきたからこそ思い至ったという、強い意志を感じました。

 クジラ食というと、私も学校給食で出された少し苦みのある肉の味を思い出しますくらいでしたが、クジラ資源という考え方について認識を新たにさせられる内容のインタビューでした。


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